その一 この話はフィクションです

 僕らが18になるまで過ごしたあの場所はもうすぐ無くなってしまう。市町村合併とか何とか知らないけれど、それはきっと一部の人が得するだけで僕らには何の特もない。ただ、故郷を失ったような感覚を僕らに与えてくれるんだろう。
 故郷を失うことは痛みなのか?喜びなのか?僕には分からない。経験したことのないことをさも知ったように語ることには僕はまだ幼い。あの時、あの場所で大事な友達たちと過ごした日々の記憶だけは決して失われることがない。僕がボケ老人になるまでは。